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育児休暇の普及〜制度の違いと意識の違い〜

 前回の記事に引き続き、交流会を通して気になった点について調べてみました。

私が今回調べたのは、育児休業制度についてです。

スウェーデンの育児休業制度において進んでいるイメージを裏付ける要素を見つけました。

記事内の画像をクリックすると参考サイトが開きます

取得率の高さ

 スウェーデンでの育児休暇取得率は、女性で80%強、男性で80%弱です(2004年)。

日本においても女性の育児休暇取得率は80%台ですが、男性は6.16%であり(2018年)、

男性の育児参加への意識が多少上がったように思われても、スウェーデンとの差は依然大きいままです。


 また、日本では、出産後に育児と仕事の両立ができずに仕事を辞めてしまう人が5割弱います(2010年〜14年)。このことから、スウェーデンがいかに高い水準を保っているかがよくわかります。



では、取得期間はどうなっているのでしょうか。スウェーデンでは、子供が8歳になるまで、両親合わせて480日取得でき、父・母それぞれに譲ることのできない90日間が含まれます。






それを取得しなかった場合には、その権利は無くなってしまいます。

これが、男性の育児休業をより推し進めているのではないでしょうか。


所得保障と代替要員

 以上のように育児休暇取得率が高くなっているのには理由があります。

その理由として、所得保障の充実と代替要員の確保の徹底があります。

1974年に導入された両親保険から休業中の最初の390日間は賃金の80%が保証され、その後の90日間は定額の手当を受給できます。また、それに加えて約25%の事業所で最大9割もしくは10割の所得支給を行なっています(2005年時点)。


そして、スウェーデンの事業所では、業務を分担しつつ、臨時社員を雇用して対応したり、短時間勤務やテレワークを利用したりしています。職場において誰かが抜けてもフォローできる体制がきちんととられているようです。




日本での育児休業制度

 スウェーデンの制度が素晴らしく見えますが、日本の制度も実は充実しています。

令和元年の厚生労働省作成の「育児休業制度について」によると、父親の取得率改善のために、父・母両方が育児休暇を取得する場合、休業期間が延長されたり、出産後8週間以内に父親が取得した場合は再度の取得が可能になったりします。



 所得保障は、雇用保険からの給付で、原則として休業開始時賃金月額×50%(休業開始後6月は67%)が支給されます。

また、育児時休業中の社会保険料は免除されるなどの措置があります。

 スウェーデンの80%以上の保証には及ばないものの、制度としてはしっかりとしたものがあるようです。


何が違うのか?

 ここで考えられるのが、人々の意識の違いです。昨年スウェーデン渡航において訪問した企業では、育児休暇を取らないことの方が驚きということを聞きました。

 そのような考え方はスウェーデンにおいても割と最近になってから少しずつ制度とともに広がっていったようです。


 対して日本では、上記の「育児休業制度について」の現状において指摘されているとおり、妊娠・出産を機に退職した理由として両立の難しさが約30%となっています。

 このことからわかるように、日本の多くの職場では、未だ出産や育児に対して親和的な雰囲気が醸成されていないのでしょう。



しかし、企業独自の取り組みによって社員の意識が変化している例もあるようです。


まずは企業が率先して育児休暇所得を推進し、そのような企業を選ぼうとする人が増えることで、他の企業も追従し、社会全体の取得状況の改善が実現されれば良いのではと考えます。


参考

内閣府,2005「2 仕事と家庭の両立支援」内閣府ホームページより「平成17年版 少子化社会白書」(2021年1月17日取得)


厚生労働省 雇用環境・金当局 職業生活両立課,2019「育児休業制度について」(2021年1月17日取得)


Newsweek,2020『父親の育休取得9割のスウェーデンに学ぶ「イクメン」ライフスタイルとは?』(2021年1月17日取得)



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