スウェーデンで起業が盛んなわけとは…?~ストックホルム大学院生に聞く
先日、ストックホルム大学大学院生の山田様に、zoomでお話を伺いました。山田様は国際比較教育学を専攻されており、当日は北欧の起業教育やイノベーションシステムについてお話を聞かせていただきました。終盤には、スウェーデンと日本、それぞれのコロナやワクチン接種の状況についても話題にあがり、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。

現在スウェーデンでは多くの若者が次々と起業していて、「北欧のシリコンバレー」として大きな注目を集めています。その背景には、起業家精神(アントレトレナーシップ)の育成や、行政主導の起業バックアップ制度の充実など、多くの要因があるそうです。今回は伺ったお話の中で、特に印象深かった点をご紹介します。
アントレトレナーシップ教育
まず印象的だったのは、スウェーデンでは起業家精神の育成が「義務教育」に盛り込まれている、という点です。特に一定期間以上の職業体験は義務教育として必須となっているそうで、スウェーデンの若者は、日本の若者と比較してかなり早い段階から実務経験を積んでいることになります。一方日本では、「大学生が長期休暇を利用して自力でインターン先を探し、職業体験をする」というケースは多数あるものの、学生が起業する例はスウェーデンと比べるとまだ少ないように感じます。

この差は、まさに”アントレトレナーシップ教育”のおかげといってもよく、「大学生も積極的に起業してよい!(するべきだ!)」という風潮がスウェーデン国内には共有されているようです。そのため、身近な起業家ロールモデルに刺激を受けやすく、その若者たちがさらに起業を目指す、という好循環が生まれているのです。
チャレンジ精神が豊富なスウェーデン人の中には連続起業家(シリアルアントレプレナー)もいるそうです…!「起業」という選択肢の可能性の大きさには驚かされますね。
またスウェーデンの母語は英語ではありませんが、大部分のスウェーデン人はとても流暢な英語を使いこなせるそうです(スウェーデンの国際英語力ランキングは4位!)。高い英語力も起業する上で大きな強みとなっています。
行政主導の起業バックアップ制度
スウェーデンではアントレトレナーシップ教育に限らず、起業家へのバックアップ制度も非常に先進的です。
高福祉国家として有名なスウェーデンは、国民全体に経済的余裕があるため、そもそも起業しやすい環境となっています。たとえば、事業に失敗してしまった場合にも「失業後300日間は前職の給与の最大80%を保障する」といった手厚い失業保険が適用されるため、起業に際して失敗を恐れない風土が形成されています。また、スタートアップへの公的資金援助も非常に充実しており、高校生起業家向けのファンドも数多く存在しているそうです。

さらに、日本よりもはるかにIT化が進んでいるスウェーデンでは、起業に際しての行政手続が非常に簡単で、自宅のパソコンを使って、わずか1時間ほどで済ませることができるんです!日本で起業する場合には、煩雑な手続きのために市役所や区役所に何度も足を運ばなければならないので、雲泥の差ですね…。
個人的に最も画期的だと感じたのは、”The Right to Leave to Conduct a Business Operation Act(起業するための休暇をとる権利)” が国によって保障されていることです。この権利に基づき、スウェーデン人は会社に勤めながら、起業準備のために最長6か月の休暇を取得することができます。起業準備がうまくいかなかった場合でも、休暇後に元の会社で働き続けることも可能で、まさにスウェーデンのフレキシブルな職場環境を反映しているような制度です。改めて、スウェーデンが国を挙げて起業を推進しているのだと感じられます。
最後に
山田様、貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。
日本の若者にはまだまだハードルの高い「起業」ですが、スウェーデンで運用されている制度を日本にも取り入れ、「起業」がより身近な選択肢のひとつになってほしいと感じます。
今後MOSでは、スウェーデンのスタートアップ企業をさらに掘り下げていく予定ですので、ご期待ください!