【ビジネスのはなし】 北欧におけるイノベーション
更新日:2021年12月1日
はじめに
今回は “ノルディックイノベーションハウス東京” のコミュニティディレクター、ニコラス・カルボーネンさんにお話を伺いました。

ノルディックイノベーションハウス東京って?
ノルディックイノベーションハウス東京は、北欧 5 か国が連携し、日本市場への進出を目指す北欧のスタートアップ企業を支援する「プラットフォーム」として機能している組織です。2011年に初の拠点としてシンガポールが選ばれ、ニューヨーク、香港、シン ガポールと続きました。東京は 2020 年に5つ目の拠点として開設されました。
皆さんにもおなじみ、音楽配信の「Spotify」や料理宅配の「Wolt」もメンバーの一員だ そうですよ。
では、ニコラスさんにお話を伺って学んだことをご紹介します。
北欧のビジネスについて
北欧の産業面について、主に以下の 3 つの特徴があることを学びました。
① スタートアップ大国

1 つ目は、北欧諸国、特にスウェーデンはスタートアップ大国であるということです。スウェーデンは人口が少なく、国内市場も小さい為、古くから外向きのビジネスを提供してきました。世界のニーズを最速でキャッチする必要があることから、起業が盛んで、政府のサポートも非常に手厚いです。その結果、北欧諸国には多くの駆け出し企業が存在し、その中でも日本への進出を目指す企業が、ノルディックイノベーションハウス東京の会員になっています。
② デジタル化

2 つ目は、北欧ではデジタル化が進んでいるということです。日本でも 9 月にデジ タル庁が設置され、デジタル化が目指されていますが、スウェーデンでは古くからそ の動きが進行していました。政府は勿論、キャッシュレスやデジタル通貨など、産業面においても世界に先駆けた取り組みが行われています。
③ 人間中心デザイン
3 つ目は、「人間中心デザイン」という思考があるということです。「人間を中心に置き、ユーザーにとって使いやすいように物事を設計する」デザインのことで、北欧では IT 設計やシティ構造など、あらゆる場面で人間を主体とするデザインが施されています。
環境への取り組みについて

北欧では環境への取り組みが積極的であるということも学びました。具体的には、物だけでなく技術やアイデアも共有する「シェアリング」、手作りを楽しむ「ハンドメイドの文化」、ヴィンテージを愛する「セカンドハンドストアの普及」などです。今年の MOS のテーマは「環境」ということで、この点についてはもっと自主学習をし、知識を深めていきたいです。
色々な「〇〇テク」について

今まで知らなかった「〇〇テク」についても学びました。北欧は科学技術に強く、再生可能資源からエネルギーを作り出す「クリーンテック」、金融と情報通信技術を結び付ける「フィンテック」、科学技術を用いて世界の諸問題を解決する「ディープテック」など、 様々なテクにおいて最先端の研究が成されています。
Q&A
今回の質疑応答の中から、いくつかをピックアップして紹介します。
Q. なぜ東京が 5 つ目の拠点に選ばれたのですか?
A. 「理由は3つあります。
1 つ目は、北欧の強みと日本のニーズが合致しているからです。北欧はエコシステムや技術革新に力を入れていますが、それらは日本から高い関心が寄せられています。日本からの投資も年々増えており、東京に拠点を置くことで結びつきが一層強まるのではと考えました。
2 つ目は、市場力があるからです。日本は人口も多く、GPAも先進国と比べて引けを取りません。IKEAの商品や北欧柄なども高い人気があります。スタートアップ企業にとって市場というのはとても重要なもので、その点で東京は新しい拠点に相応しいと判断しました。
3 つ目は、日本が異文化の国だからです。北欧の文化を北欧やヨーロッパに広めても意味がありません。むしろアジアなど、北欧にとっては「異文化」ともいえる国々に広めた方が刺激的です。文化が違うからこそ、北欧の価値観を広める意義があると思いま した。」
Q. なぜ北欧ではデジタル化が進んでいるのですか?
A. 「『政府に対する国民の信頼』のおかげだと思います。デジタル化をするということは、 政府が国民のあらゆる情報を保持するようになる、ということです。中にはプライバシーを侵害されるようでどこかもやっとした気持ちを抱く人もいるでしょう。しかし北欧では、多くの国民が政府を信頼し、デジタル化への移行を許容しています。技術を身に着けることも大切ですが、まずは国民からの信頼を獲得することが、デジタル化への第一歩なのかもしれません。 」
Q. 日本に住んでみてどうですか?
A. 「良い面は、まず何よりも安全であるということですね。四季があるのも素敵だと思い ます。夏だけはどうにもじめじめしていて好きになれませんが(笑)。また、特に東京では様々な人と交流が出来るので楽しいなと感じます。外国人が集まる場やコミュニティも沢山あるんですよ。

悪い面、というより北欧とは異なる点ですが、すべての意思決定においてステップがあるように感じます。何かをする際にはその過程をとても大事にするというか。また柔軟性も北欧と比べるとあまりないなと思います。ルールがしっかりしていて、慣れるま では大変だと感じることもありました。 」
おわりに
今回は zoomで1時間程度お話を伺ったのですが、ニコラスさんはとても優しく、お話しやすい方でした。スウェーデンの産業や環境に関することだけでなく、暮らしやプライベートなことなど、色々なことを教えていただきました。新型コロナウイルスで渡航が出来ないのはとても残念ですが、zoom で色々な人と手軽にお話できるようになったのは嬉しいですね。
ニコラスさん、今回は本当にありがとうございました。MOS も学んだことを活かし、さらにレベルアップしていきたいです。